坂内拓さんの個展に行ってきました。
今回の個展のテーマは「東京 tokyo」。
生まれも育ちも東京という坂内さん。
「東京」というと、どうしても大都市ど真ん中な感じ、
きらびやかなイメージ、その反面ごみごみした感じ、
汚いものたくさんなイメージが先行してしまうけれど、
そんな場所ばかりでもなくて、ちゃんと住める場所、
人がのびのびと息をしている場所だってあるんです。
きっとそんなところで生まれ育って、
そして芸術を志したのだろうなと思えるような、
そんなイラストたちが展示されていました。
飾られていた名刺に書かれていた地名が、
わたしも大学時代に少し馴染みのある街だったので、
「この街で描かれた絵なのか」と合点がいった部分もあったりして。
色彩の感覚や、表現するものに現れる空気感といったものは、
やっぱり生まれてから見てきたもの、感じてきたもの、
そして吸収してきたものによって滲み出るものなのですね。
あの辺りで生まれ育ってきた友人や知人が何人かいますが、
心なしかそのみんなと似通った雰囲気を感じるところもあったりして、
少し懐かしさをも感じました。
飾られていたイラストのなかで、わたしが一番気に入ったのはこの絵。
色づかいと構図と、どれもがとてもツボでした。
作品集のなかにこのイラストも盛り込まれていたので、購入。
おうちのどこかに飾ろうかなあ、と計画中です。
坂内さんの存在を知ったのは、「毎秒、君に恋してる」のアートワークがきっかけ。
なので切り絵で作品を作られている方だという認識だったのですが、
こちらは筆で描かれているようでした。
イラストを描くのに使っているツールは違えど、
使われている色彩とそこに現れている透明感や空気感は変わらなくて。
表現したいものの核がしっかりとしているのだろうなぁ……と
見ていてひしひしと感じました。
メラメラと燃える炎というよりは、静かに高い熱を帯びている青い炎。
そんな炎が心のなかに、そして作品のなかに宿っているような気がしました。
* * *
「わたしらしさ」「あなたらしさ」って何?
こんなことは、サラリーマンとして名前が出ないように
物書きや編集の仕事をしていると考える機会はあまりない
(むしろ人の代弁をする場合は、出すことを考えてはいけなかったりもする)
のですが、ほぼ日の塾に参加したときにたくさんたくさん向き合いました。
……向き合ったといいつつ、顔をそむけたり逃げてばかりだったので、
結果的に見つかったのかというと、見つからぬままなのですが。
ひとりの人間として、「名前」を表に出して「作品」を発して、
出したものに責任をもって挑んでいる人の姿は、
たくましくもあり、かっこよくもあり、芯の強さを感じたりもします。
わたしが惹かれる人たちは、基本的にこういうことと徹底的に向き合って、
そして発信をしている人たちばかりだから、
やっぱりわたしは「ないものねだり」をしているのかもしれないし、
尊敬と、ほんの少しの(良い意味での)嫉妬を感じながらも、
「刺激」をもらっているのだろうな。
わたしは、色彩的センスもなければ、美術的センスもないし、
音楽的センスもなければ、言語的なセンスも特別際立って
あるわけではありません。
けれども、やっぱり「ものが生まれる瞬間」を見届けることが好きだから、
できるかぎりそういうところに近い場所に身を置きたいし、
限りなく一生に近い形でそういうところに携わっていきたいな、なんて、
「決意」というにはとてもとても覚悟が足りませんが、
ふわっとそんなことを思った瞬間でした。
来てよかったな。